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特集 橋下・松井府政が4年半でやってきたこと




「府営住宅は黒字」を踏まえた運営を

日本共産党大阪府議会議員団政調会長 堀田 文一


はじめに

 いま、とりわけ大阪は非正規雇用の拡大により、賃金低下と雇用不安が進み、消費の冷え込みが深刻です。その中で住宅の確保が大きな課題になっています。
 府はことし3月、国に提出した住宅バウチャー(家賃補助)制度を求める要望書で、家賃補助を必要とする府内の住宅困窮者を、全世帯の15%に相当する60万世帯と見積もりました。
 国土交通省が実施した2008年土の住宅土地・統計調査によると、府の最低居住面積水準(健康で文化的な生活を営む上で必要不可欠な、国が定めた面積の水準)未満世帯は全世帯の6.4%で、全国平均4.3%を大きく上回っています。
 このような中で、住宅問題の解決には公営住宅の供給が欠かせませんが、最近の府営住宅総合募集の応募倍率は20倍前後で推移し、中でも大阪市内が著しく高倍率です(表1)。これは府営住宅が大きく不足していること示しています。
 府営住宅は51年に施行された公営住宅法に基づき建設されてきました。当初は戦後復興や高度経済成長を支える役割を果たし、団地も老若男女が暮らす元気な地域でした。
 ところが歴代の政権は公営住宅の増設にブレーキをかけ、収入基準を極端に引き下げ、若年層と中間層を公営住宅から追い出す政策を取ってきました。
 橋下徹大阪市長が府知事に就任したのは08年2月。以後3年9カ月間の短い任期中に、多くの府営住宅後退策を打ち出しました。それは松井一郎知事にも引き継がれています。

1.橋下前知事が進めた住宅改悪

@家賃減免制度の改悪

 09年4月から家賃計算の改悪実施を、当時の自公政権は計画していました。所得が同じでも所得ランクが上がったとして家賃を上げるものでした。橋下前知事は政府の計画を府営住宅にそのまま実施し、それによって入居者の28%が、2〜22%の家賃値上げになりました。
 同時に橋下前知事は、太田元知事が02年に改悪した減免制度をさらに改悪し、家賃減免を受けていた世帯の85%が月平均7400円の借上げになりました(表2に家賃減免の推移)。
 この2つの家賃値上げは、09年4月から同時実施されたため、値上げ幅が特に大きい場合には9年かけて段階的に値上げする経過措置を取りました。

A東三国住宅を廃止

 府営東三国住宅(大阪市淀川区)は、68−69年度に建設された4棟366戸の高層団地です。耐震力不足のため改修策検討の委託を受けた業者は、耐震改修は可能、戸数を減らせば建て替えも可節と答えを出していました。
 ところが09年度、橋下前知事は、改修では部屋の狭さ(1戸38平方bと43平方b)は改善されず、戸数を減らせば建て替え後に帰れない人がいて不公平という理由で、府営住宅としては初めて三国住宅全体の廃止を決定し、全員を追い出すことにしました。しかし狭くても喜んで住んでいる人が大半でした。戸数が減って帰って来られない人が出るのはつらいことですが、誰も帰られないのはもっとつらいことです。
 私は府議会で質問する中で、橋下前知事は入居者のための耐震改修でなく、府営住宅減らしを進めているのだと感じました。

B府営住宅の半減を計画

 10年秋、橋下前知事は、「府財政構造改革プラン(案)」をまとめ、その中で「バウチャー制度(家賃補助)などの新たなスタイルの住宅セーフティーネット政策の構築など、住宅市場全体で必要な住宅の確保に努めるとともに、府と基礎自治体等の協調によるソフト・ハード両面にわたる低所得者や高齢者等への対応を前提として、府営住宅ストックについては将来的に量的な半減を図る」との方針を打ち出しました。
 私は同年9月議会で橋下前知事に、バウチャー制度などの前提ができなければ将来的に量的な半減もしないのかと質しました。橋下前知事は「前提がしっかりしないとそういうこと(半減)は目指しません」と答えました。(傍線は堀田)
 その後、府は「住宅バウチャー(家賃補助)の提案について」という文書を国に提出しました。しかし国に住宅バウチャーを実施する動きはありません。
 前提条件付きとはいえ橋下前知事が半減を打ち出したことは、府の住宅散策に大きな悪影響をもたらしました。

C公園を低未利用地と称して廃止・売却へ

 住宅経営室が府営住宅内の低未利用地のリストを作成し、11−13年度の3年間で、26億円の府営住宅用地を売却する計画が、12年2月議会で明らかになりました。堺市美原区北余部住宅、住吉区長居住宅など、たくさんの子どもたちが遊ぶ児童公園が幾つも含まれています。
 以前は国が公営住宅内の公園面積に1戸当たり6平方bという基準を定め、ゆったりとした児童公園が府営住宅内にも造られていました。ところが国がその基準を廃止し、民間マンションでも公営住宅でも公園は敷地面積の3%でいいとしました。
 その方針変更を口実に、松井知事は3%より広い公園を低未利用地と位置づけ、廃止・売却を計画したわけです。

2.府営住宅削減が松井知事の手で新たな段階へ

@人口減少を口実に、府営住宅を戸数削減へ

 松井知事は3月未、新しい府まちづくりマスタープランと府営住宅ストック総合活用計画を発表しました。
 マスタープランは、「今後の住宅セーフティーネット政策は、見込まれる人口・世帯数の減少や一層の高齢化も見据えながら、民間賃貸住宅市場を含めた住宅市場全体で展開を図ることとし、府営住宅については「量的な縮小」を図ると書いています。
 しかし人口は減少しても、民間家賃の負担をきついと感じる住宅困窮者は増えています。

A需要があっても戸数削減

 府営住宅ストック総合活用計画は、建て替え戸数を現入居者数に合わせることにより5千戸、需要の低い団地の空室集約化等で5千戸、合わせて1万戸を10年間で削減する方針を打ち出しました。
 私の地元の豊中市では、新千里北・南町住宅が建て替え予定となっていますが、募集停止のために大量の空き家が発生しています(表3)。今後、建て替えの完了までには空き家はさらに増えます。募集停止で増やした空き家を、空き家という理由で削減することは、府民から府営住宅に入居を申し込む権利を奪うものです。

B年間建て替え戸数を4割ダウン

 ストック総合活用計画は、今後10年間で、建て替え戸数は前期計画の4割減の1万2千戸、耐震改修戸数は3割増の1万2干戸、中層エレベーター設置は6倍増の2800基を予定しています。
 耐震改修戸数やエレベーターを増やすのは当然です。しかし建て替え戸数の大幅削減は、住宅困窮者の解消に逆行するものです。

C府営住宅の市町移管

 ストック総合活用計画は、「府民の貴重な資産である府営住宅ストックを地元市町とともに活用し、地域力の向上とまちの活力をを創出していきます」と書いています。これに先立ち11年度から府は「府営住宅資産を活用したまちづくり研究会」を発足させ、府営住宅の市町への移管を促進してきました。
 ところが、橋下前知事が言い出した市町移管を前向きに受けとめているのは、橋下大阪市長しかいません。
 総合計画は「積極的にまちづくりに活用」などと書いていますが、府営住宅は住宅セーフティーネットです。
 多くの市町は責任と負担が増すと考えています。橋下市長は新婚世帯向け家賃補助の募集も停止しました。だから橋下市長だけが府営住宅の移管に飛び付いたのでしょうか。府の住宅政策放棄につながる市町移管方針は見直すべきです。

3.府営住宅の充実・前進のために

 自民党政権が始めた、公営住宅から若年層や中間層を追い出す住宅政策は、府営住宅の高齢者率を32.6%(11年3月末)と、府域全域の高齢者率22.4%(10年国勢調査)に比べ、格段に高くしました。府営住宅における自治会活動の困難化が拡大し、孤独死も相次いでいます。
 その対策として、新婚・子育て世代の入居収入基準引き上げの検討が各地で始まっています。当然のことです。これまで低所得や高齢者・障害者などが入居しやすかった状況も後退させられません。そのためには戸数削減ではなく、拡大こそ進めるべきです。
 府営住宅事業は府が作成した財務状況(試算)によると、黒字を毎年73〜101億円出し、6年間の合計は499億円に達しています(表4)。戸数削減や公園売却の理由はありません。
 06年の三位一体改革により国庫補助制度の交付金化や、地方税・地方交付税等への税源移譲が行われました。そして、今年度になり、交付金が地方の要望通り交付されなくなり、予定していた建て替えや耐震改修が大幅に遅れる事態となっています。
 その上、府営住宅の税源として移譲を受けた地方税や地方交付税が、府営住宅以外の予算として使われるという事態も起きています。
 憲法25条に基づき制定された公営住宅法は、公営住宅の安定した運営が可能となるよう必要な国庫補助制度を設けていました。その補助制度が崩されはじめています。
 府営住宅は増築をはじめ計画修繕、耐震改修、エレベーター設置、地域活動の困難解消など課題は山積みです。これらの課題に真っ正面から取り組むためにも「府営住宅は黒字」ということを踏まえた運営が求められています。




「大阪民主新報」2012年8月19日付より



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