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A 児童文学館−踏みにじられた民主主義

世界でも有数の資料集積地
府立国際児童文学館をめぐる主な動き
08年1月27日 知事選で橋下徹氏当選
2月6日 橋下知事が初登庁、「財政非常事態」宣言
13日 知事直轄の改革プロジェクトチ-ムが発足
3月10日 吹田市が府に存続を求める要望書を提出
20日 知事が児童文学館を視察
28日 財団法人大阪国際児童文学館が現地存続を求める上申書を提出
4月11日 「財政再建プログラム試案」で09年度中に廃止し、機能を府立中央図書館に移設すると明記
18日 「大阪国際児童文学館を育てる会」が第1次署名提出(3万8395人分)
6月5日 「大阪維新プログラム案」で09年度中に廃止し、機能を府立中央図書館に移設すると明記
7月1日 臨時府議会(〜23日) すべての主要会派が本会議、委員会で児童文学館問題を取り上げる
7月25日 「育てる会」が第7次の署名提出(累計8万6486人分)
9月6日 橋下知事の私設秘書による児童文学館内の「隠し撮り」が発覚
10月15日 9月府議会閉会本会議で、当面の現地存続を求める請願が全会一致採択
09年1月21日 鳥越信氏ら資料寄贈者が橋下知事と面談
3月16日 鳥越氏らが資料返還を求めて大阪地裁に提訴
24日 2月府議会閉会本会議で、09年度末の廃止条例案と、中央図書館への移転・統合予算案が、自民、公明などの賛成多数で可決
12月27日 児童文学館が休館
10年1月28日 中央図書館への蔵書移転作業始まる


 「戻っておいで。私たちは、あきらめないよ」−1月28日、吹田市の万博記念公園内にある府立国際児童文学館に、「大阪国際児童文学館を育てる会(育てる会)」の呼び掛けで集まった約50人の人々の声が響きました。
 府立国際児童文学館は、昨年2月府議会での廃止条例案の可決後、昨年12月27日を最後に事実上の閉館となり、この日から、中央図書館への蔵書。資料の搬出が始まりました。
 1984年に開館した国際児童文学館。児童文学研究者の鳥越信さんが収集資料12万点を寄贈するに当たり、大阪府は引き続き資料を収集し、整理・研究し、公開することを約束。世界有数の「児童文学総合資料センター」として発展し、約70万点の蔵書・資料の約6割は出版社、個人からの寄贈です。
 搬送トラックの前で開かれた集会に、滋賀県から駆け付けた今関信子さんは、元日本児童文学者協会会長の古田定日(たるひ)さんに師事した児童文学研究者。
 「大阪で児童文学館の建設に当たり、古田先生は、児童文学書が寄贈されるよう、東京の出版社を一つひとつ訪ね歩いて説得されました。私たちの未来である子どもの文化を育てる拠点として、変わらぬ役割を果たしてきた施設なのに」と語りました。
 1月28日の集会参加者が持ち寄ったプラカードには、与謝野晶子の短歌をもじって、こう書いてありました。「寄贈者の/あつき血汐に/ふれも見で/おごるなかれや/数を説く者」。

館内の隠し撮りをしてまで

 08年2月に就任し「財政非常事態」を宣言した橋下知事は、「図書館以外は不要」などと決め付けながら、府の各施設を視察しました。国際児童文学館は「同じような機能の所に統合すればいい」と府立中央図書館への統合を示唆。6月の「大阪維新プログラム案」では、財政再建プログラム試案(4月)同様、「09年度中の廃止、府立中央図書館への移設」を明記しました。
 これに対し現地存続を求めて、著名な文化人や出版社、国内外の児童文学関連団体などがメッセージや要望書を橋下知事に提出。「育てる会」は知事視察の直後から著名運動に取り組み、7月の第7次提出では総数8万6486人分に上りました。
 「児童文学館を守れ」の声が急速に広がる中で、橋下知事が私設秘書に国際児童文学館内を隠し撮りさせていたことが9月に発覚。9月府議会の代表質問で「明白な違法行為」(日本共産党・堀田文一議員)と追及を受けても、橋下知事は謝罪せず、「府民から見れば予算の適正な執行の管理ということで問題はない」と居直りました。

全会一致で採択された請願

 同じ9月府議会では、「育てる会」はじめ20団体が提出した、当面の現地存続を求める請願が全会一致で採択。ところが橋下知事は、「はじめに廃止・移転ありき」で、議会の総意を無視し、府立中央図書館への移転に固執してきました。
 09年2月府議会では、廃止条例案と移転関連予算が自民、公明などの賛成多数で可決。同議会の教育文化常任委員会では、国際児童文学館の機能を引き継ぐことなどを盛り込んだ付帯決議が採択されました。しかし、配置される専門員の任期は3年であることや、日本に1点しかない貴重な資料はじめ蔵書の散逸や破損の恐れを指摘する声も出ています。

事実を伝えて声上げ続ける

 国際児童文学館の廃止は、橋下府牧の「実像」を物語る象徴的な問題だと強調するのは、「育てる会」常任委員長の畠山兆子さん(梅花女子大学−教授)。畠山さんは、「児童文学館は、人間の命や経済に直接かかわることではありませんが、もっと深い問題につながっています。未来を担う子どもたちは投票権もない弱者です。私たちは弱者の正当な権利として、府議会に請願を出しました。民主主義を信じて」と語ります。
 昨年1月、鳥越氏ら寄贈者・専門家と知事との面談にも出席した畠山さんは、当面現地存続を求める請願が、府民の代表である府議会で、全会一致で採択された意味を力説。橋下知事は「重く受け止める」と言いながら、廃止・移転の考えを変えませんでした。
 畠山さんは、「8割という支持率は高いが、弱者が正当な手段で訴えたことを聞かず、正当に評価も説明もせず、強引にやってしまう。こういう知事です。少しでも多くの府民の皆さんに、児童文学館の事実を伝え、『おかしい』と声を上げてほしい」と訴えます。


「大阪民主新報」2010年2月7日付より


B7、8割の支持率の一方で


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