第3回 府政の「開発会社」化と
深まる財政危機の進行

     前回見てきたように「住民の福祉の増進を図る」という地方自治体本来の責務を放棄して府民に犠牲をしいる一方、不要不急の巨大開発は全く見直さず推進してきたのが太田府政です。(表1)
その典型が、関西空港2期事業です。


 
  
需要のびず

 もともと関東の人口は約4040万人で近畿の人口約2080万人約2倍です。成田とはりあって2本目の滑走路をつくろうという計画に無理がありました。案の定、成田空港の暫定滑走路供用開始によって成田に航路がシフトされ、不況もあいまって航空需要は大きく落ち込んでいます。(表2)
 大阪府は1本の滑走路では年間発着数16万回までしか対応できず、2005年度にはそれをオーバーするとして、99年から2本目の滑走路の建設をはじめました。しかし、昨年6月、国土交通省は「2007年度でも13・6万回にとどまる」と2回目の大幅な下方修正をおこないました。昨年度は、この下方修正さえ下回り、開港2年目並にまで落ち込み、今年度はさらに減少しています。
 関空会社の年間有利子債務は1兆円、累積赤字も2千億円を超え、経営破たんはだれの目にも明らかです。在日外国航空会社協議会はもちろん国内航空会社でつくる定期航空協会も「2本目の滑走路は当面不要」との見解(昨年6月)を明らかにしています。朝日新聞社の世論調査(昨年2月)でも「延期あるいは中止」が67%にものぼっています。ところが太田府政はこうした声にはまったく耳を貸さず、「2007年供用開始」にむけひたすら工事を続行しています。関空開港を目当てにした関連の開発事業の泉佐野コスモポリス事業も破たんし、その穴埋めに約270億円もの税金を投入しました。対岸のりんくうタウンも分譲がすすまず、6割もの分譲価格の値下げや賃貸方式が本格導入されています。そして、今後計画通り分譲・賃貸がすすんでも企業会計は2千億円以上の財源不足が見込まれ、一般会計で補填しようとしているのです。
 企業局会計は独立採算なので府民に負担はかけないといいながら、結局失敗のつけを府民の税金で穴埋めしているのが実態です。(表3)
 
道路やダム

 さらに太田府政は、阪神高速道路の新たな環状道路の建設をすすめ、府も573億円以上を負担しようとしていますが、2002年の需要見通し1日110万台に対して実績は年々減少し、約89万台、予測と実績(表4)の乖離はますます広がるばかりで、見直しが必要です。
 太田府政はまた、ダムによらない治水利水に大きく転換している長野県などとはちがい、安威側ダムなどダム建設に固執しています。これも府営水道の1日最大給水量253万dという多すぎる需要予測にもとづくもので、90年代から水需要の実績は200万d前後を横ばいし伸びる根拠はまったくありません。
 しかも、工業用水道の転用で新たに12万dの利水権を取得し、水源開発としての安威川ダムはいよいよ不要です。ところが府は、安威川ダムの総事業費をことし836億円から1400億円に一挙に7割も膨らませられました。
 ムダな公共事業の中止、見直しの動きが全国に広がっているとき、推進一辺倒の大阪府の開発行政の異常さを浮きたたせています。
 開発優先の府政によって、府財政も危機的状況になっています。
実質府税収入は、1990年がピークで、1兆3510億円ですが、2003年度には7639億円と56・5%にまで減少しています。しかし、国庫補助がつく公共事業は、2003年度は2436億円と90年度と同水準です。
 
暮らしこそ

 財政危機なのに大型開発をすすめた結果、公共事業に占める借金の割合も前横山府政の96年〜99年の55・4%から、太田府政の2000年から03年度は57・2%に増えました。6割近くを借金に頼って公共事業すすめるという異常な財政運営はむしろ強まっているのです。(表5)
 借金の総額も太田府政の4年間で9139億円増えて4兆7459億円になり、借金の元利償還=公債費も2003年度は3536億円と4年前より814億円増加しています。(表6)
 大型開発優先でなく、府民の暮らし、中小企業を守る府政への転換が財政再建のためにも必要となっています。



**続いて第4回をお読みください**





2003年8月24日付
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日本共産党大阪府議会議員団