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大阪の地震対策を見直す方向について

日本共産党大阪府議会議員 堀田 文一

はじめに

 東北地方太平洋沖地震は、国・府・市町村のこれまでの地震対策の不十分さを直撃し、東日本大震災を引き起こしました。

 大阪府はこれまで、地震についてはプレート型の南海・東南海地震や上町断層帯などの直下型地震を想定し、大阪府地域防災計画を策定して、対策を実施してきました。
 しかし、今回の東日本大震災を見れば、防災対策の不十分さは明らかであり、見直しは急務です。

 中でも、東南海地震は今後30年以内の発生確率が60〜70%程度、南海地震は50%程度とされてきましたが、今回の東北地方太平洋沖地震をきっかけに、発生確率がさらに高まる恐れもあります。

 地震の規模も、東南海・南海地震は、最高でM8.6と想定されていますが、今回の東北地方太平洋沖地震がタテ500km、ヨコ200kmの岩盤が動き、規模がM9.0に達した現実を踏まえ、東南海・南海地震も東海地震などさらに広い岩盤との連動も想定し、規模の想定もM9.0以上に変更しなければなりません。

 現在、大阪府は地域防災計画の見直し作業を開始しています。
 府議会でも災害対策調査特別委員会が設置され、地震対策についての提言を1年後にまとめることを目標に、7月12日、審議が始まり、私が日本共産党府議団を代表して審議に参加しています。

 そこで、大阪における地震対策で早急に見直すべき主なポイントをまとめてみました。


大阪の津波対策は根底から見直しを

 @大阪府地域防災計画は、南海・東南海地震が起こった際、最大で3mの津波を想定していました。

 これまで大阪は、室戸台風やジェーン台風で大きな高潮被害を受けてきたことから、超大型台風による高潮に備えて、大阪湾に防潮堤・水門(安治川・木津川・尻無川にかかる3大水門)・鉄扉を、OP6.6m(満潮位2.1m+4.5m)の計画で整備してきました。

 その結果、一部地区では津波による浸水が想定されるものの、防潮堤・水門・鉄扉により、津波による浸水は基本的に防ぐことができるとして、津波対策は防潮堤・水門・鉄扉の耐震補強に重点が置かれてきました。

 A南海・東南海地震の地震規模がM9.0以上になった場合、津波の高さはこれまでの想定の2倍になるといわれ、大阪の津波対策は根底から見直しが求められています。

 大阪府は7月6日、「当面、最大で津波高が従来計画の想定の2倍(3〜6m)になると仮定して、『避難』を中心にソフト対策を講じていく」と発表しました。

 新たな想定に基づき防潮堤や水門を嵩上げするには、多額の予算と一定の年月が必要です。
 当面、避難を中心とした施策の充実は欠かせません。

  ソフト対策としては、地震直後に的確な津波警報を発令し府民に周知徹底するシステム、マンション・ビル・高架駅などを避難施設として活用し全浸水予想区域で住民がもれなく避難できるシステム、避難が困難な要援護者の避難を応援するシステム、地下室・地下街など津波で重大な危険が生じる施設での特別の避難システムなどの構築が必要です。

 B大阪の人口密度・都市規模や建物・都市施設の現状を考えれば、新たな津波対策は防潮堤・水門・鉄扉の嵩上げを基本としなければなりません。

 三陸海岸では10mの防潮堤が破壊された例がいくつも報告されていますが、大阪で目指すべき防潮堤は、現状のOP6.6mという低いレベルを引き上げるもので、不可能なことではありません。
 早急に、新しい防潮堤の高さを決定し、積極的に建設していくことが必要です。

 これまで三大水門は津波によって損傷しないよう、津波襲来時には閉鎖しないものとされてきました。
 三大水門は、大阪を津波から守る施設になるよう、作り替えが必要です。


被害が懸念される超高層ビルの対策

 プレート型地震である東北地方太平洋沖地震は、大阪では震度3でしたが、地震の長周期成分により、咲洲庁舎はエレベーター4基の故障を始め、360箇所の内装材・防火戸等の損傷という予想を超える大きな被害を被りました。
 同じプレート型地震である南海・東南海地震は、大阪では震度3より遙かに大きい震度6弱が想定されており、咲洲庁舎をはじめとする超高層ビルに、さらに大きな被害をもたらすことが懸念されています。

 長周期地震動の超高層ビルに対する影響は、未解明の部分が少なくありません。
 超高層ビルが長周期地震動で重大な損傷を受ければ、入居者の被害も、周辺への影響も甚大なものになります。

 超高層ビルが長周期地震動によって重大な損傷を受けないよう、国に徹底検証と対策の抜本的強化を求めるとともに、大阪府も日本第二の大都会として、超高層ビル対策に取り組むことが必要です。


住宅や学校などの耐震化促進が必要

 @建築物の耐震改修の促進に関する法律は、2015年までに90%の目標を掲げています。

 大阪では、90%の目標を達成するには、住宅については47万戸分の建て替え・改修等が必要とされていますが、昨年度の1年間で公的な耐震改修助成を受けて耐震化されたのは、わずか386戸にしかすぎません。

 A耐震化の遅れを克服するには、耐震改修助成事業の抜本的拡充が必要です。

 例えば、耐震改修に200万円を要しても、補助金は定額の40万円(低所得の場合は60万円)しかなく、住民の負担の大きさが耐震改修の遅れをもたらしています。
 補助金の引き上げが必要です。

 また、耐震改修だけでは、高齢者にとってメリットのある段差解消や手すりの取り付け、トイレ・浴室の改造はできません。
 高齢者にとってメリットのある住宅リフォームは、大阪では補助対象になっていません。
 住宅リフォームを創設し、耐震改修と統一的に運用することが、耐震改修を大きく進める現実的な方策です。

 耐震改修の助成対象は、昭和56年5月31日以前に建築された建物だけです。
 それ以降に建築された建物でも、耐震性能が低ければ、助成対象に含めるべきです。

 B建物の耐震改修を2015年度90%とする目標は、国が2006年に設定したものですが、100%達成の目標は示されていません。
 残る10%に犠牲者が集中したのでは、耐震改修助成の値打ちはありません。

 2015年度90%以降、100%達成をめざした目標設定が求められています。

 C府有建築物は、住宅と同じく2015年度90%を目標として耐震化が進められていますが、中でも「災害時に重要な機能を果たす建築物」、例えば庁舎、警察、病院、保健所、避難所に指定されている府立学校などについては、2015年度100%を目標として耐震化が進められています。

 今年度当初の府有建築物の耐震化率は71.6%になっていますが、目標通り達成させなければなりません。

 府内の各市町村でも、学校等の耐震化が進められていますが、市町村立学校の平均耐震化率は67%で、21市町村は50%にも達していません。
 府は耐震化が遅れている市町村への援助を拡大しなければなりません。


液状化被害に備え対策や助成事業を

 大阪は、中心部が淀川の三角州として発達した街であり、南海・東南海地震で広範囲かつ大規模な液状化が発生し、ライフラインや建物に深刻な被害を引き起こすことが予想されています。

 すでに液状化予測図は作られていますが、より詳細な予測図の作成が必要です。
 公共機関は液状化に強いライフラインの整備に力を入れなければなりません。
 新たな建物の建設に当たっては液状化対策を指導するとともに、既存住宅での液状化予防についても、耐震補強助成に準じた助成事業を開始すべきです。


密集住宅市街地の整備事業の拡充を

 密集住宅市街地整備事業は、老朽木造賃貸対策をはじめ、不燃領域率の向上、消防活動困難区域の縮小などを目的にした、災害に強いまちづくりの中核的事業です。

 この事業は1972年に豊中市庄内再開発事業として始まり、現在、大阪府内は7市で事業中です。
 現に人が住んでいる住宅地区での再整備事業であるため、息の長い取り組みがすすめられています。

 橋下知事は就任直後の財政再建プログラム(案)策定作業の中で、この事業を市が進めるべき事業と位置づけ、大阪府の役割を大きく後退させようとしました。
 知事の動きに対し、関係市から存続の要望が相次ぎ、事業は現在も継続されていますが、予算は、橋下知事就任直前の2007年度3億1271万円から、今年度の1億2825万円へと激減しています。

 大阪はまだ、今なお、災害に弱い街です。
 地震を大震災にさせないために、事業の充実・拡大が求められています。


原発廃止、自然エネルギーに転換

 大阪府地域防災計画(原子力災害対策編)は、府内の原子力事業所である熊取町・京都大学原子炉実験所(試験研究炉・熱出力5000kw)、熊取町・原子燃料工業株式会社熊取事業所(核燃料加工施設)、東大阪・近畿大学原子力研究所(試験研究炉・熱出力1w)だけを対象としています。

 今回の東日本大震災は、原子力発電所が地震や津波に脆く、原子力発電所に事故が起きれば、取り返しの付かない被害が広範囲に広がり、影響は日本全国に及ぶことを示しています。
 原子力発電所に保管されている使用済み核燃料(核のゴミ)が、処理できるメドもなく増え続けていることも、防災上、重大な問題です。

 大阪の付近には福井県に関西電力の11基の原子力発電所があります。
 出力も1基で118万キロワット〜34万キロワットという極めて大規模なもので、中には建設後40年を経過した老朽原発もあります。
 関電の原発以外にも、高速増殖炉もんじゅなど、問題続出で停止中の原発もあります。

 これらの原子力発電所のうち一番大阪に近い高浜原発は、大阪北部の能勢町と61kmしか離れていません。
 福井の原発に重大事故が起きれば、関西の水源地である琵琶湖が汚染され、関西一円に高濃度の放射性物質が飛散し、文字通り取り返しの付かない事故になってしまいます。

 大阪府民を原子力災害から予防するには、関西電力の原発に事故を起こさせないことです。
 それには関西電力の原子力発電所を廃止することが、最も確かな保障です。

 大阪府が原子力災害から府民を守るには、原子力発電所の廃止と自然エネルギーへの転換、小エネルギー社会の実現を自らの方針として掲げ、国や関西電力に実現を強く迫ることが、求められています。


府庁の防災機能は本庁に集約すべき

 咲洲庁舎は立地でも、構造物としても、大災害時には府庁としての役割を果たせないことが、東北地方太平洋沖地震による大阪の震度3の地震動で明らかになりました。

 現在の二重府庁状態は、府民にも、府庁の業務執行の点でも、多大なロスをもたらしています。

 現本庁を耐震改修し、咲洲庁舎は速やかに廃止して現本庁に戻し、現本庁が文字通り大阪全体の防災拠点の役割を果たすことが求められています。


大阪府と広域連合 府民の役割は何か

 @防災対策は、国・府・市町村など行政機関が、府民の命と財産を守るために、府民と事業者の協力をえて、災害の予防、災害発生時の応急・復旧・復興を内容とした行政にとって基幹的な業務です。

 防災対策において国・都道府県・市町村には役割分担はありますが、中核的役割を果たすべきは都道府県であり、大阪府です。

 A大阪府地域防災計画には、「自らの安全は自らの守るのが防災の基本であることから、住民はその自覚を持ち、平常時より、災害に対する備えを心がけるとともに、災害時には自らの安全を守るよう行動・・・(総則第4節)」と記されています。

 府民が自らの安全を自ら守るよう努めるのは当然のことですが、災害対策は、自らの命や財産が守れないような状況での対策です。
 災害への対処方策について、府民に啓発活動を展開することは大切なことですが、災害対策の基本を自己責任におくのは、行政の責任を曖昧にしかねません。

 地域防災計画から、自己責任を強調する文言は削除すべきです。

 B大災害時に、地方自治体が都道府県や市町村の境界を超えて、相互に応援することは、重要な活動です。
 発足したばかりの関西広域連合は、府県間の協力調整機能を果たすことが求められています。

 C東日本大震災では、国の対応の遅れが目立ちました。
 とりわけ、福島原発事故については国の無策ぶりが際だちました。

 これらの国の問題点については、国において解決を図るよう、求めていく必要があります。

 関西広域連合は、国土の安全に責任を負う国土交通省近畿地方整備局など、国の出先機関の移管を求め、国の役割と責任の後退を目標としています。
 しかし、地方自治体の力だけでは府民の命と財産が守れないのは明白です。

 関西広域連合は、国に成り代わるのではなく、国と府県の協力関係をより深めるためにこそ、役割を果たすべきです。




「大阪民主新報」2011年8月7・14日付より



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