大阪府知事 橋下 徹 様

2009年7月30日
日本共産党大阪府議会議員団
団長 宮原 威 

2010年度予算編成にあたっての要望

 政府は「景気の底を打った」とするが、今年1〜3月期の大阪の完全失業率は5.3%、5月の有効求人倍率は0.49倍と、雇用はむしろ深刻化し、賃金、消費の下落・縮小傾向は歯止めがかかっていない。府内企業の倒産は、今年上半期1239件と前年同期比16.3%増となり、資本金100万円未満の企業が占める割合は36%に達している。

 欧米諸国に比べて異常な経済の落ち込みは、輸出大企業を応援する一方、非正規雇用を増やし、社会保障の削減など、暮らしにくく、内需の弱い経済社会をいっそう推し進めた、自民、公明政権の「構造改革」の結果である。

 大阪でも、必要性、緊急性に欠ける大型開発の抜本見直しは行わず、福祉・教育・中小企業対策費の削減を続け、府民に痛みを押し付け、大阪経済の足腰を弱くする府政が続けられてきた。

 今、必要なことは、行き過ぎた大企業優先、暮らし破壊の国政の転換であり、地方自治体が「住民の福祉の増進を図ることを基本」とする本来の役割を最大限に発揮することである。知事もこの立場に立ち、大阪府独自に「福祉の増進」に努めるとともに、国に対して医療、社会保障施策等の抜本的拡充を求めるべきである。

 ところが知事は、こうした政治の転換抜きに、大阪府解体・道州制に、一路、突き進もうとしている。市町村への補助金削減と権限移譲、水道事業からの撤退、府立大学の見直し、福祉団体への補助金カット、私学助成の削減などが強行・検討されている。

 大阪府解体と道州制は、知事選ではもちろん、その後も府民的議論は行われていない。にもかかわらず、道州制移行を府の方針にし、それを前提に諸施策を進めることは許されない。大阪府解体・道州制移行に向けた取り組みは中止すべきである。

 知事は、自民党や民主党などの総選挙マニフェストに「地方分権」を盛り込むよう迫っている。しかし、知事や経済界が唱える「地方分権」の出口は、道州制である。道州制は広域開発などには都合がいいが、住民自治を大きく後退させるなど、地方自治制度として大きな問題を抱えている。

 自民、公明政権の進めてきた「地方分権」は、三位一体改革や市町村合併にみられるように、住民福祉の縮小と地方自治の後退をもたらしただけであった。

 また、もともと不十分な文化・スポーツ施策の廃止・見直しが強行され、大阪の文化は、重大な後退の危機を迎えている。文化施策と施設を守る方向を明確にすべきである。

 以上の点から、来年度の予算編成にあたっては、この1年半の府政を真摯に総括し、府民の暮らしと健康を守ることを府政の基本に据えるよう求める。
 とりわけ、全階層にわたって貧困化が際立つ大阪で、暮らしと雇用応援を府政運営のすべてに貫くこと、中小企業支援の充実、大企業に社会的役割を発揮するよう求めるという二つの柱で大阪経済発展の道筋を探求することが必要である。

 以下、重点的な内容を提起する。

 なお、詳細な要望項目については、後日提出する。

重点要望

1.府民のくらしと雇用の応援を府政運営のすべてに貫く。

2.仕事確保・金融支援・下請けいじめ防止など中小企業を守る施策を多面的に前進させる。大企業には雇用確保と中小企業との対等の関係づくりなど、社会的責任を求める。

3.教育は、子どもを貧困から守り、過度な競争を持ち込まない。特に、私学助成は元に戻し、府立高校授業料は全国水準まで引き下げる。

4.大阪の文化を発展させる。文化支援を後退させる方針は撤回する。
  特に、国際児童文学館、ワッハ上方は、移転について関係者の合意が得られるまで、現在地で存続させる。

5.新型インフルエンザ対策をはじめ、府民の命を守る施策を充実させる。
  特に、国民健康保険や後期高齢者医療の保険証の取り上げを止めさせる。

6.住宅の耐震改修をはじめ、公共施設・公衆施設の耐震化を促進するなど、府民の安全 を守る。

7.緑を増やし、地球温暖化対策とヒートアイランド対策を進めるとともに、生活道路や 公園・下水など生活密着型の公共事業を推進し、快適な大阪をつくる。

8.財政再建の取り組みに当たっては、次の方策を基本とする
 @ 大型開発は前知事時代から引き継いだ方針を全面的に見直す。淀川左岸線延伸部など新たな大型公共事業には手を付けない。新名神高速道路の凍結区間の解除を国に求めない。
 A 同和対策事業は完全に終結する。
 B 国直轄事業負担金や国関係出資法人への負担金は、廃止を求める。

9.地方自治を否定する関西州への道は進まない。
 @ 水道事業は、来年度からの値下げを実施し、さらなる値下げのために府・市事業の  協同化による経営改善をすすめる。大阪府の水道事業に対する責任を放棄するコンセ  ッション型指定管理者制度の導入はしない。
 A 関西広域連合(仮称)は、母体である関西広域機構の国への要望が示すとおり、大  型開発の推進組織となるものであり、参加しない。

9月補正予算の編成について


 国の「経済対策」に伴う基金・交付金の活用を含む9月補正予算は、次の諸点に留意して編成するよう求める。

1.民意と議会が否定したWTCビルの購入、同ビルへの府庁移転は、再提案しない。

2.雇用の拡大
 @ 正規雇用の拡大と雇用の長期化・安定化を促進する。とりわけ、雇用環境の厳しい若年・女性の雇用促進を図る。また、障害者雇用を支援する施策の具体化を図る。
 A 財界に、リストラをやめるよう求めるとともに、労働者派遣法の抜本改正を国に要求する。

3.中小企業・商店街支援の強化
 @ 中小企業や商店街などの実態を調査し、実態と要望の把握、仕事興しを図る。
 A 貸工場に対する家賃補助などの固定費軽減助成を実施する。

4.福祉・介護について
 @ ひとり暮らし高齢者の訪問実態調査を行い、必要な介護・医療を保障する。
 A 公立病院については、国のガイドラインなどにとらわれず、地元自治体と住民の意見をよく聞き、地域医療の中核としての役割を果たすよう改善、充実させる。

5.新型インフルエンザ対策
 @ 感染拡大の防止対策に努めるとともに、感染拡大の動向を正確に把握する。
 A 感染者が速やかに適切な医療が受けられる体制を確保する。
 B 感染拡大防止のために府が休業要請した障害者施設などへの損失補償を政府に強く求めるとともに、府独自の損失補償を実施する。損失補償の規定をつくる。

6.暮らしに密着した公共事業の推進と地元中小企業への発注
 @ 住宅の耐震改修をはじめ、公共・公衆施設の耐震化を促進する。
 A 公共施設の維持修繕に積極的に取り組み、地元中小企業に発注する。
 B 住宅、道路など、バリアフリーのまちづくりを促進する。
 C がけ崩れ等の危険箇所対策を進める。

7.教育費の負担軽減と教育環境の整備促進
 @ 全国学力学習状況調査の市町村別結果は公表しない。
 A 知的障がい支援学校の分校・分教室に必要な施設整備を行う。
 B 低所得世帯などに対する私学の学費負担軽減を実施する。
 C 府立高校の授業料軽減を図る。

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