くち原議員の代表質問(大要)

2009年7月2日

 日本共産党のくち原亮です。わが党議員団を代表して質問します。

 麻生首相は、成立した補正予算について、「景気の底割れを防ぎ、かつ、その内容は、生活支援」だとアピールしています。

 しかし日本経済の悪化は、欧米より急激です。

もともと家計が冷え込んでいた上、輸出頼みを強めてきた大手製造業が、一気に「派遣切り」「期間工切り」に走ったためです。家計を冷え込ませてきたのは「構造改革」による不安定雇用の拡大であり、税と社会保障の負担増、給付減です。賃金が減って、税と保険料が増え、将来不安が広がりました。

 国民負担増と雇用破壊の流れを転換しない限り、くらしと雇用は立て直せません。

 ところが、政府の補正予算は、この間、大量の派遣切りを強行してきた大企業には大盤振る舞いする一方で、雇用や医療、子育てなど、国民向けの対策は一時的、1回きりのバラマキです。

 社会保障費の自然増を毎年2200億円削減することも来年度実施は見送ったものの抑制路線は継続です。

 消費税増税計画が国民の不安に拍車をかけています。

 政府のいう「景気の底打ち」、鉱工業生産の上昇は、輸出大企業を中心に「在庫調整」と労働者と家計に大打撃を与えた「雇用調整」を急激に進めた結果、生産が上昇に向い始めたものです。雇用悪化は今後も続く見込みです。

 不況打開のためには、一時的なバラマキではなく、雇用や社会保障などの抜本的制度改革こそ必要だと考えますが知事の認識をお聞かせ下さい。

 私どもは、こうした政府の補正予算には反対ですが、大阪府への交付金及び基金などについては、不十分ながら雇用やくらしの対策に活用できる財政措置も含まれており、少しでも有効に活用し府民生活を応援していくことが求められています。

 大阪の今年1月から3月期の完全失業率は、女性が前年同期比4.6%から5.8%、15才から24才までは7%から11.7%と、女性と若年の雇用悪化が特徴です。

 中小企業をめぐっては、売上・利益減、資金繰りの困難さも増し、昨年の倒産件数は、負債額1000万円以上だけでも2,148件に上っています。

 生活保護率は2.74%で、全国の2.1倍と低所得者の多さも特徴です。

 就学援助も認定基準が改悪された下でも全国一高い受給率で、「子どもの貧困日本一」となっているのが大阪です。

 昨年の孤独死は、3,558人と4年前の131%に増加し、自殺も2,128人と2年続けて2,000人を超えています。

 こうした特徴からみても、大阪での具体化にあたっては、雇用確保や中小企業対策、福祉・医療の充実などが必要だと考えますが知事の認識はいかがでしょうか。

 以下、具体的に質問します。

 まず、緊急雇用創出基金事業について数点お聞きします。

 府内には、20万人以上の完全失業者がいますが、この基金事業による雇用創出効果はその1割にも届きません。また、この事業は、雇用期間を原則6カ月未満としているなど極めて不十分な内容になっていますが、できるだけ正規・継続雇用につながるよう、関係市町村とも知恵を出し合い、工夫すべきです。

 また、高槻市では、ふるさと雇用再生基金の活用で森林労働者の正規雇用を確保しようとしていますが、緊急雇用創出基金についても正規雇用の拡大に活用ができるよう、国に対し、条件緩和を求めるべきではありませんか。

 第2は、この基金を使って府民が抱える問題解決に役立てることです。
例えば、一人暮らしの高齢者の問題は深刻です。

 そこで提案ですが、介護や医療を受けていない、一人暮らしの高齢者の全戸訪問調査を行い、関係機関と連携して必要があれば、医療や介護につなげる事業を実施してはどうでしょうか。

 また、市町村や関係団体とも協力し中小零細企業の実態調査に取り組み、要望の把握、仕事興しにつなげる事業を実施してはどうか。

 第3は、雇用をつくり出すための事業を一刻も早く実施することです。
緊急雇用創出基金の1次分が、3月に議会を通りながら実際の事業実施は、7月か8月からとなっています。今回、拡充される基金は、市町村によっては、9月議会でしか予算化できないところもあります。市町村とも協力して、一刻も早い事業実施を求めるものです。

 それぞれ答弁を求めます。

 以上、3点について聞いてきましたが、さらに肝心な事は、国の責任で正規雇用を増やす対策を講じるとともに大企業に正規雇用を拡大するよう求めることです。国に強く要請するよう求めます。

 次に、緊急雇用創出基金事業を 除く商工労働部予算について質問します。

 緊急雇用創出基金事業を除く、商工労働部の予算要求は、21項目、37億8600万円でしたが、予算案として決定されたのは、6項目、4億9700万円で、金額でわずか13%にすぎません。

 就職困難な障害者や若者、女性などの緊急雇用確保事業費として8億8000万円の要求が出ていましたが、ゼロ査定です。

 この中には、きちんと障害者を雇用している企業を奨励したり、雇用マッチング事業が含まれています。また、比較的就職が困難といわれている普通科の高校生を対象とした技術研修事業など重要な予算が要望されていました。

 中小企業対策でも、連鎖倒産防止緊急支援事業が半額にされているほか、中小企業資金繰り改善計画策定支援事業費は消えました。

 さらに、商店街活性化予算である大阪商店街逸品プロモーション事業2500万円もありません。なぜこれらを認めなかったのですか。
雇用をめぐる状況や中小企業・商店街のおかれている状況を知事はわかっておられないのではないでしょうか。

 それぞれ答弁を求めます。

 次に、医療・福祉の問題です。

 まず、新型インフルエンザ対策についてです。

 その1は、知事の要請によって、休業した福祉施設の経済的損失に対する補償の問題です。報酬が日払いになっている障害者施設や通所介護施設などは休業によって収入が減少し、加えて新型インフルエンザ対策として備品や消耗品購入など予定外の出費など多額の経済的損失が生じています。

 政府は、「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」を活用するよう通達を出していますが、本予算案では、経済損失補償は見当たりません。

 大阪府は、5月末から障害者、高齢者及び児童施設に対して休業に関するアンケート調査をしましたが、高齢者施設については休業による経済的損失の調査項目すらありません。障害者施設については収入の減少を調査項目にあげていますが未だに集計もしていません。

 府はまず、知事の要請に従って休業をした事業所の数、休業した日数、収入減少額などを詳細に調査し、実態の正確な把握を急ぐべきですが、どうですか。

 本来、休業補償は国の責任です。府は国に対し、補償制度の創設を要望していますが、知事自身がもっと強力に要請行動を起こすべきです。
その上で当面の問題として交付金を活用し、府としての補償に乗り出すべきではありませんか。答弁を求めます。

 その2は、陰圧病床などの整備についてです。

 5月議会で、11億7000万円を補正し、陰圧病床、および外来陰圧診療室それぞれ126カ所の設置などに取り組み、加えて今回、地域活性化・経済危機対策臨時交付金を使って、府立の2病院への陰圧ベッド18床の設置などを予定していますが、流行が懸念される秋・冬に向けて確保できる陰圧病床数と外来陰圧診療室数を明らかにして下さい。

 また、厚生労働省が、先月発表した新型インフルエンザ対策の新運用指針によると、入院は重症化しやすい妊婦や乳幼児、高齢者、糖尿などの持病のある人に限定するとのことですが、大阪で、どの程度の感染症ベッドが必要なのでしょうか。

 さらに、国に対し、今後、流行した場合の医療・検査体制、薬品や消耗品の備蓄など対策強化を求めるべきです。

 それぞれ答弁を求めます。

 医療・福祉の第2は、不妊治療補助金についてです。

 現在は、国と府が2分の1ずつの負担で1回10万円の補助となっています。これを15万円に引き上げ、引き上げ分は交付金を全額当てるとのことですが、国の負担は今年度限りですから、来年度には、府の負担は一挙に2倍になってしまいます。来年度以降の予算措置を国に求めるべきです。いかがですか。

 第3に、「安心こども基金」についてです

 この基金は、2年間で保育所の待機児解消を旗印にして、民間保育所の保育所整備補助金のうち一定の条件のもとに市町村の負担を12分の1にするという内容になっています。

 当初予算分を合わせると、基金総額は168億円ですが、このうち保育所整備費は耐震化分も含めて2年で66億円です。本年4月の保育所待機児は政令市、中核市を含めて約1600人です。昨年の府の資料では、10月には4月時点の4倍に待機児が増えています。

 待機児解消というなら2010年度までに6千数百人分の整備が必要になりますが、この程度の基金で待機児ゼロが実現する見通しはありません。また民間保育所の耐震化率は54.8%ですが、この予算でどこまでの改善ができるのでしょうか。国に予算増額を求めるべきではありませんか。お答え下さい。

 さらにこの基金には、学童クラブ施設整備費が含まれていますが、倉庫としていた空き教室を学童クラブに使う場合にのみ活用できるという制限があるため、利用できる市がなく、基金からの予算化はありません。市町村での超過負担の解消など柔軟な使い方ができるよう、市町村の裁量を認めるべきです。府として国に要望しているとのことですが、さらに強力に要求すべきです。

 第4に、介護職員および福祉・介護人材の処遇改善の基金事業についてです。

 この事業は、介護や障害者施設の職員の処遇を一人当たり月平均1万5000円改善しようというものです。

 しかしこの事業は、2011年度までのものであり、必要な人材確保のためには事業の継続実施とともに介護保険の改善や障害者自立支援法の廃止など抜本的な制度の見直しを国に求めるべきです。

 また、直接介護にあたらないケアマネージャーや相談員、地域活動支援センターやガイドヘルパーなど地域活動支援事業に従事する人々への待遇改善措置はありません。知事として、基金の柔軟な運用を求め、全ての福祉・介護職員の処遇改善が可能になるよう国に要求すべきではありませんか。

 併せてお答え下さい。

 次に教育です。

 深刻な不況のもと、知事は、私学経常費助成削減に続いて、今年度から授業料軽減助成も削減しました。この春の高校入試では、私立高校受験者が激減、公立高校受験者の激増と大量の不合格者、夜間定時制高校の2次選抜で前例のない、167人もの大量の不合格者を出しました。

 知事による私学助成の削減がこうした事態を招いたものです。その認識はありますか。

 大阪府として、教育費の保護者負担軽減の具体化を図るとともに、国に対して、小中学生の就学援助、私学助成の拡充、高校授業料の段階的無償化へ向けた施策と財政措置の強化を求めるべきです。答弁を求めます。

 最後に、耐震対策についてです。

 今回の補正予算の中に、耐震化の推進が盛り込まれ、学校・府営住宅などの府有建築物、社会福祉施設、私立認可保育園の耐震化予算が56億円計上されています。これらは当然、推進すべきことですが、住宅の耐震化の予算は、耐震化の普及・啓発のための1000万円しかありません。

 一昨年より住宅の耐震改修助成が制度化されましたが、2007年度は目標800戸に対して実績は16戸、昨年度は目標300戸に対して実績は156戸と、住宅の耐震改修は、著しく遅れています。

 本来なら、耐震改修助成の補助率15.2%の引き上げや、補助限度額60万円の増額こそ実施すべき所ですが、今回は臨時交付金を使った補正予算ということで、1000万円の耐震化普及・啓発費が組まれたのだと思います。

 そこで、今回の補正予算による耐震化普及・啓発を実効あるものにするためにも、耐震改修助成の限度額と補助率の引き上げをはじめとする次の対策を検討することが必要です。知事の見解を求めます。