府庁WTC移転  災害対策検討なし
津波の影響「分からない」
共産党・宮原府議が追及


 橋下徹知事が「関西州の州都」とまで位置づけているWTCへの府庁移転。しかし移転案について、府は災害対策をまともに検討していないことが浮き彫りになりました。6日開かれた9月定例府議会の総務常任委員会で、日本共産党の宮原威議員が追及したものです。

高潮時の津波全く考慮せず

 宮原議員はWTC移転案の防災対策をただした中で、東南海地震での津波の影響問題を取り上げました。現庁舎のある大手前は、大阪湾の最低潮位(OP)プラス15.7メートル。WTCはプラス6..7bで、高潮時の潮位プラス6.6bのぎりぎりです。

 宮原議員は、「潮位プラス5メートルの津波が高潮時に来れば、(WTCの位置を)超えてしまう」と浸水の危険性を指摘。府は、過去最大の潮位は、室戸台風時(1934年)の潮位プラス5メートルだと説明しただけで、「(津波と高潮が)同時うんぬんは、よく分からない」などと答えました。

 宮原議員は、「防災対策を検討していないのと同じだ」と強調。また災害時に府庁に参集できる府職員の数は、半径5キロメートル以内でWTCは大手前の約18%、半径10キロメートル以内でも約40%にすぎないことや、WTCでは府警本部や大阪市との連携も難しくなると指摘したのに対し、府は「職員の参集体制には課題がある」と述べるにとどまりました。東南海地震が震度6弱と予測されている中で、地下鉄は震度4でいったん運転を停止することなどを示し、災害時にWTCは「事実上“陸の孤島”になる」と主張しました。

情報を公開し公平な議論を

 また宮原議員は、地方自治法第4条は庁舎の位置について「住民の利用に最も便利」であることを定め、その決定は出席議員の3分の2の賛成が必要としていることから、庁舎問題は「大阪府50年、100年の大計であり、慎重であるべき重大問題」と強調。橋下知事が、WTC移転を含む庁舎整備案の審議を求めながら、「僕の判断としては(WTC移転に)決まり」などと公然と方向性を打ち出し、府幹部も「9月議会中に結論を」などと発言していることについで、「府庁全体が問題を軽く取り扱っているように見える」と批判。許認可で府庁に来る年間約40万人以外に、議会各会派への相談や要望、請願や陳情で来庁する府民の数についても把握することを要望、府庁への往復所要時間が、WTCに移転すれば府民で平均38分増えることなど、庁舎整備構想の情報公開を徹底し、公平で慎重な議論を行うよう求めました。

 これに対し府は「利便性では多少の不便はかけるが、府民の理解は得られるのではないかと思う」などと答えました。

 さらに宮原議員は、大手前地域は大阪城やNHK、由緒ある文化施設が集積し、「大阪の顔」として日本、大阪に通用していると指摘。街づくりの観点からも、「世界遺産にも志願する展望を持って、緑や文化に磨きをかけるべき」と力説しました。


2008年10月12日付「大阪民主新報」より