府民切り捨て、府政解体・道州制へ  正体見えた橋下「行革」

橋下府政半年 臨時議会閉会

共産党府議団・阿部幹事長に聞く

 2月に橋下徹知事が就任してから、8月6日で半年になります。7月臨時府議会の閉会を受けて、橋下府政や各党の動向、今後の課題などについて、日本共産党大阪府議会議員団の阿部誠行幹事長に聞きました。

府民の期待にどこ吹く風

――橋下府政初の本格予算案を審議した7月臨時府議会が終わりました。

阿部 今議会の最大の特徴は、橋下「改革」の正体が見えたということです。何よりも、橋下知事の「大阪維新プログラム(維新案)」が、大阪府政を解体し、自公政治や関西財界が狙う関西州を目指す計画だということが、わが党の論戦を通して、はっきりしました。知事自身は「財政再建」の先に、府民にとっての「パラダイス」はないと語ってきました。「自己責任」と「互助」の名で、福祉など身近な住民サービスは府の仕事ではなく、市町村に押し付けるという方向を打ち出しています。

 その一方で、国際的な「都市間競争」に勝ち抜くためとして、府の役割は、中小企業対策より、大企業が活動しやすいように、関西州での広域ネットワークの高速道路網の整備など巨大開発の推進や、大企業優遇策に特化していく。箕面森町(水と緑の健康都市)、安威川ダム、新名神高速道路の関連府道整備は、「ゼロベースからの見直し」した結果、基本的に全て継続。新名神について橋下知事は、「関西州に必要」「需要がなくてもつくる」と発言するなど、ストレートに表明しています。

 知事選で府民は、「子どもが笑う」と訴えた橋下知事を支持し、「橋下さんなら大阪を変えてくれる」と期待しました。府民意識調査でも、福祉や医療、教育、治安の充実を求める声が大きいわけですが、そうした期待に応えた改革ではなく、府民には我慢を押し付け、府民が願ってもいない関西財界や自公政治が目指す道州制導入に向かうという方向です。

オール与党の本質変わらず

――橋下府政に対する各党の動向は?

阿部 自民、公明両党は、橋下「改革」そのものを高く評価し、推進していく立場を明確にしています。知事選で対立候補を擁立した民主党は、野党第一党ということで対決姿勢≠示そうとしてきましたが、7月臨時議会では、知事のわずかな議案修正を受けて、「改革」そのものに支持を表明しました。

 無駄な巨大開発を進めてきた「オール与党」府政の本質は変わらず、むしろ、財界や自民党政治が狙う方向にはっきりと進もうとしているのが特徴です。これらの諸党と、府民との矛盾も、ますます大きくなるでしょう。

 これに対して日本共産党は、財政危機の原因が国の地方自治体への財政締め付けと、無駄な開発にあることを一貫して主張してきました。今議会でも、広域自治体として府が果たさなければならない、住民福祉の増進を図るという地方自治体本来のあり方を正面から対置して論戦し、府政解体・関西州へという橋下「改革」が、本末転倒であることを追及してきました。

 なお、臨時府議会では、議員報酬と政務調査費の削減とともに、わが党が毎年の「大阪府議会の民主的改革の提案」などで粘り強く主張してきた費用弁償の廃止や海外視察の中止も実現しました。

 定数削減問題が今後の議会改革の大きな焦点になりますが、住民意思を正確に反映する議会の役割に逆行するものであり、認めることはできません。

府民との共同全力で広げる

――橋下知事は市町村との役割分担など「次の一手」を着々と準備する一方、維新案の見直しや府民要求実現を求める運動もかつてなく広がっています。

阿部 4月のPT試案以来、わずか3カ月間で、300万人を超す署名、340団体・個人からの要望など、橋下「改革」に「待った」をかける草の根の運動が急速に広がったのも、府政史上かつてない出来事です。

 PT試案で廃止とされた35人学級を守り、警察官の定員削減、救命センターへの補助金廃止もさせませんでした。臨時議会で橋下知事が、私学助成や人件費問題で議案を修正せざるを得なくなったのも、府民の世論と運動の力です。私学助成の授業料軽減助成も削減幅を大きく見直させることができました。

 府民は橋下「改革」にもろ手を挙げて賛成しているのではなく、「改革」の正体を見抜く目が府民の中に育っていると思います。この間、幅広い府民団体から出されている要求は、どれも正当なもの。そこに確信を持って、さらに運動を広げることが大事だし、共同をさらに大きく広げるため、わが党議員団も全力を挙げたいと思います。
橋下知事は、「次の一手」で、道州制に向けての新たなスタートを切り、産業政策では財界の意見を大いに聞くと明言しています。さらに新設の「地域主権プロジェクトチーム」で、市町村への補助金の交付金化を検討するとしています。福祉・医療・教育などの住民サービスを市町村に押し付け、補助金総額をカットしていく方向であり、市町村でも運動を強めることが必要です。

 府民の暮らしは原油高騰や物価高の中で、ますます悪化しています。その下で、橋下「改革」による一般施策の廃止は今年度は374項目322億円、09年度490項目407億円と、さらに激しくなります。府民犠牲の橋下「改革」との闘いは、総選挙で、行き詰まった自民党政治を変える闘いとも直結しています。府議団としてその先頭に立って奮闘する決意です。
(2008年8月3日付「大阪民主新報」より)


2008年8月3日付「大阪民主新報」より)