くち原議員の代表質問(要旨)


2008年7月8日
くち原亮


 日本共産党のくち原亮です。知事及び健康福祉部長に質問いたします。

 大阪では、貧困と格差の広がりが益々深刻になっています。
その中で、今、大阪府が果たすべき役割は、すべての府民が憲法25条に謳われた、健康で文化的な生活を営むことができるように、府民の命と安全を守り、福祉の増進を図って、人間としての尊厳を失わずに暮らすことができるように応援することです。

 その立場から見れば、財政再建プログラム案は、ただでさえ不十分な府の福祉行政を、さらに切り刻むものになっています。

 「特に配慮した施策」として「障害者に関する施策「いのちに関する施策、などとしていますが、どこまでの配慮がされたのでしょうか。

 障害者の方々が日常生活を送る上で欠かせないガイドヘルパー派遣や日常生活用具給付の補助金が来年度から廃止、小規模通所授産施設への府独自の支援強化事業が、今年度から削減され、来年度以降順次削減幅を拡大し、2011年度には廃止。精神障害者権利擁護システム事業は、この8月から廃止です。

 他にも、各障害者団体への運営補助が軒並み廃止など、障害保健福祉室所管の障害者関連施策129事業の内、従来通り継続されるのは国事業を含めても41事業だけで、約7割の88事業が今年度或いは来年度以降、削減・廃止されようとしています。

 このようにプログラム案が配慮したとしている障害者に関わる施策についても大幅な改悪が行われており、一部事業に配慮したに過ぎません。

 障害者の皆さんは「障害者の暮らしを削って、イルミネーションですか」と抗議の行動を起こしています。

 府民の命と健康にかかわる、そして障害者の方々が日常生活を送る上で必要な施策の改悪は思いとどまるべきです。

 そこで数点の障害者施策について質問します。
 まず、精神障害者権利擁護システム事業についてです。
 この事業は、2000年5月に大阪府精神保健福祉審議会の知事への意見具申に基づいて制度化された事業であり、2003年に事業が開始されて以降、精神医療オンブズマンの方々が5年間で、延べ76病院を訪問。その中で、入院患者に風呂場やトイレの掃除をさせていたり知的障害のある患者をベッドに拘束していたりトイレに鍵がない病棟があったり、或いはトイレのドアが破損したまま放置しているなど、明らかな人権侵害や人権上の問題がある事例が数多く判明し、その改善に貢献してきました。

 改善された事例の大半は、行政監査や審査会による審査などでは見落とされてきたものであり、その成果は、精神医療オンブズマンの方々が入院患者の立場に立って、その声を聞き、改善のための活動を継続してきたからこその成果です。

 そして、こうした成果や貢献も、大阪府が設置、任命した権利擁護連絡協議会・オンブズマンだからこそ成し得たものであり、事業が廃止されてしまえば、活動の継続が困難となってしまいます。

 この事業については、大阪弁護士会、日本臨床心理学会、社団法人日本精神神経学会、日本総合病院精神医学会、大阪府精神障害者権利擁護連絡協議会などから、それぞれ会長名・理事長名で存続を求める要望書が提出されています。

 年間300万円程度の事業費で大きな成果を挙げているこの事業は継続すべきです。健康福祉部長の答弁を求めます。

 次に、地域生活支援事業市町村推進事業補助金についてです。
 この事業は、障害者の方々が外出し、移動するためのガイドヘルパー派遣に対して、生活保護世帯は無料、非課税世帯は2000円の費用負担の上限を設けるなど、利用者の負担軽減のための市町村への補助制度です。

 移動支援のガイドヘルパー派遣は、障害者の方々が日常生活を送る上で欠かせない支援です。

 2008年2月の移動支援事業の利用実績は、生活保護世帯で1146世帯、非課税世帯で3669世帯、合計で4815世帯となっています。

 一般世帯も含めれば、さらに多くの方々が利用している事業であり、障害者の方々にとって貴重な支援策です。

 ところが、プログラム案では、この事業補助金が来年度廃止となっています。

 府の補助金が廃止されれば、市町村が府の補助金分を負担しない限り、利用者の負担が増大し、障害者の方々にとって、必要なサービスを受けることができなくなってしまう事態が生じます。

 市町村からも、大阪府の補助があるからこそ軽減事業を実施できると言われています。府の補助がなくなれば、市町村格差が広がり、さらに市町村補助もなくなれば利用者が丸々1割負担しなければなりません。

 利用単価は、市町村によってまちまちですが、私の地元、東大阪市では1時間単価2000円、1カ月50時間利用すれば、非課税世帯の場合、これまでは2000円の負担だったものが市の補助もなくなれば1割負担で10000円と5倍の負担となってしまいます。療育手帳Bの知的障害と左膝関節全廃、右膝関節障害をお持ちの27歳の女性は、階段の上り下りなどが困難で外出の際にガイドヘルパーを利用する。或いは、リハビリを兼ねたプールでの歩行訓練に行く際などに利用して、毎月、40時間程度利用されています。

 その際、ガイドヘルパーの交通費も負担しなければなりません。わずかな障害者年金と親御さんからの援助によってグループホームで生活しておられる、その方にとって、ガイドヘルパーの利用料が5倍、6倍と跳ね上がれば、たちまち利用できなくなってしまいます。

 視力障害をお持ちの方にとってもガイドヘルパーは欠かせない存在です。

 障害者の方々が日常普段に出歩くことは、してはならないことなのでしょうか。障害者の方々が「普通に生活する」権利を奪う改悪は行うべきではありません。健康福祉部長の答弁を求めます。

 次に、小規模通所授産施設機能強化支援事業についてです。

 この事業は、施設や作業所、障害者団体の皆さんが要求し実現してきた支援事業であり、大阪府としてもこうした要望に応えて、小規模通所授産施設でのモノをつくり、販売する機能を強化するために法定外の加配人員を置く施設に対して、利用者数に応じ、1施設あたり110万円から200万円の補助を行ってきたものです。

 昨年度実績でも府下90カ所の施設でこの事業が活用されており、貴重な支援策となっています。

 ところがプログラム案では、この事業が、今年度10%削減、09年度:20%削減、2010年度:40%削減、2011年度:廃止となっています。

 障害者関連施設においては、厳しい経営状況、雇用条件の下で、人材確保が大きな課題となっています。

 府内の障害者施設で働く職員の平均年収は341万円と府内全業種の平均年収436万円と比較しても劣悪な処遇です。小規模通所授産施設では約280万円、無認可作業所では、約200万円と更に劣悪です。

 厳しい経営環境にある施設の方からは「施設としても補助金に依存するんではなく、知、恵を絞って、朝から晩まで倒れそうになりながら必死に頑張っている。せめてこれまでの支援は継続してほしい」という切実な願いが私のもとにも寄せられています。

 是非こうした願いに応えるべきではありませんか。

 また、障害者関連施設での、劣悪な雇用環境を改善していくための抜本的改善は、国の責任において行われるべきであり、障害者自立支援法の1割負担や日額払い方式・低すぎる報酬単価の問題などをはじめ、障害者施策の抜本的見直しを国に対して強く求めることが必要だと考えますが、知事の認識をお聞かせ下さい。

 また、この間の原油高騰が、作業所などの経営をさらに厳しい状況に追い込んでいます。

 ガソリン代の大幅値上げにより、作業所での送迎費が嵩み、送迎利用料の値上げも検討されています。

 施設や作業所の運営にとっても、また送迎を利用する障害者・家族にとっても深刻な問題です。

 このような原油高騰の影響について、大阪府はどのように認識しているのか、またこの間の実態を調査・把握しているのか。健康福祉部長の答弁を求めます。

 京都府では、原油高騰の影響による送迎サービスを利用する障害者の実費負担を軽減するための緊急対策として、障害者施設の利用者送迎一往復に対して、30円を事業所に補助する制度を創設しました。

 是非、大阪府においてもこうした支援策を実施すべきと考えるがどうか。

 最後に、人権金融公社への無利子貸付金の問題です。

 人権金融公社への無利子の貸付金は、昨日のわが党代表質問でも指摘したように2007年度末の貸付金残高は34億円となっています。

 こうした巨額の貸付金残高に対して今後の返済計画では今後4年間で約2600万円、年平均約650万円ずつしか返済されないことになっています。

 一方、人権金融公社には、人権金融公社が、住宅供給公社に2%の有利子で貸し付けている15億円によって、年間3000万円の利息収入が入る仕組みになっています。

 この点では、2006年度の包括外部監査報告でも「人権金融公社の住宅供給公社への、有利子貸付金の原資が大阪府の無利息貸付金に依存していることを併せて考慮すると、大阪府が自らの資金で自らの貸付金の償還を受けているのに等しいと考えることもできるのであって、実質的には償還金相当額の補助を行っているに等しい状態」と指摘されています。

 先程来、質問している障害者施策を削るんではなく、こうした同和の特別扱いこそ改めるべきであります。

 住宅供給公社の預託金15億円は、直ちに返還を求めるとともに、全額返済について改めて協議すべきです。

 知事の答弁を求めます。

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