開港から10年

検証・関西空港

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片翼の空港

赤字でゲート建設中止



同じ高さのビルが建つはずだった空地から見るりんくうタウンゲートタワービル=泉佐野市




関西国際空港は4日、開港10周年を迎えました。「日本を代表する初の24時間空港」「国際航空ネットワークの拠点空港」「騒音公害がなく、自然環境にも配慮した海上空港」など華やかなイメージは霧散し、負債1兆2000億円、累積損失2000億円超という現実が重くのしかかります。関空の10年を検証します。
 連絡橋をはさんで関西国際空港を臨む造成地「りんくうタウン」(泉佐野市)にそびえ立つ「りんくうゲートタワービル」。高さ256b・56階建ての関空のランドマークです。大阪府などが出資する第三セクターの所有です。同ビルは開業以来の累積赤字が約126億円に達し、ついに法的整理される見通しです。
 このビルは、当初の計画では、関空につながる路線や道路をはさんで同じ高さのビルをもう一棟つくり、空中を通路でつなぐ予定でした。「大阪・日本・アジアのゲートにふさわしいシンボリックな景観を創出する」(当時の文書から)壮大な”門”を形づくるはずでした。
 
バブル崩壊と需要低迷で・・・

 バブル期に立案・設計された関空は、実態にそぐわない過大な需要予測も手伝って、巨大・豪華なイメージを演出することに腐心していました。対岸の「りんくうタウン」も、国際空港の開港で人・物・金の巨大な流れができるとあてこんで造成されました。そこに高層のオフィスビルや商業施設が林立するイメージがふりまかれました。
  しかし、バブル崩壊と関空の需要低迷で、半分が空き地のまま。ゲートタワービルも、南側の二棟目の建設は中止されました。寂漠と広がる南棟予定地から見上げる、ペアの相手を持てなかった高層ビルの姿は、さながら巨大な片翼の鳥。関空の現状を象徴するかのようです。
 空港の機能面からも、関空の片翼ぶりは、近年際立っています。一方の翼は国際線、もう一方は国内線です。

 
国内線の便数 2年目から減


 関空は、国内線と国際線の乗り継ぎの良さを売り物にしています。ターミナルビルは、二階が国内線の出発・到着フロアになっており、エレベーターやエスカレーターで移動するだけで乗り継ぎできる構造です。ところが、大阪国際空港(伊丹空港)と比べて、大阪、京都、神戸など大都市からのアクセスに劣るため、国内線の便数は開港2年目から減りつづけています。
 国内線だけの利用客にとって、アクセスの悪さは決定的です。需要の柱である東京便の場合、大阪市中心部から約1時間かかります。交通費も割高。伊丹はもとより、新幹線との競合でも勝ち目はありません。国の規制緩和も手伝って国内線の”伊丹シフト”が近年急速に進んでいます。

二期工事にも巨費投じて


  関西経済連合会の調査によると、関空開港の1995年度の1日平均国内線着陸回数は伊丹126回、関空80回でしたが、2003年度には伊丹160回、関空56回と3倍近い開きになっています。国際・国内合わせた年間旅客数でも、02年度に関空は国内線用の伊丹に抜かれました。国内線の減はその後も続き、今年6月の実績は1日42便まで落ち込んでいます。
 これが、1期工事だけで約1兆5000億円も巨額を投じ、さらに約1兆円かけて2期工事を進めている空港の現状です。
(つづく)











2004年9月5日付「しんぶん赤旗」より
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日本共産党大阪府議会議員団