阿部誠行議員の一般質問(概要)

  2009年9月議会での阿部議員の一般質問(10月9日)の概要を紹介します。

 日本共産党の阿部誠行です。府庁舎のWTCビルへの移転問題について、知事ならびに府警察本部長に質問します。

 2006年1月、府庁本館の耐震診断結果が公表され、東館・西館ともに耐震基準を大きく下回ることが判明しました。これを受け府は、耐震補強か、建替えか。議会と十分議論したいとの意向のもと「庁舎整備検討委員会」を設置し、議論をふまえて、府は耐震改修の方針を決めました。


 委員会報告は、「庁舎周辺の環境に適合した土地活用による庁舎及び周辺整備の具体の全体像がこの議論に欠かせない」と述べています。

 また、府の資料も庁舎に求められる機能として、

 第1に、東南海・南海地震など大規模災害時における迅速な救援活動や復旧活動の拠点として、災害対策の機能性。

 第2に、バリアフリーや公共スペースの充実、本館の歴史、文化的価値に着目した府民利用の展開、

 第3に、利便性・快適性とともに効率的な行政サービスの提供、

 第4に、環境負荷の低減に向けた配慮、


 第5に、緑豊かな大阪城の景観と調和した大阪のシンボル、

 など、5つの機能を挙げています。

 また、地方自治法第4条は、庁舎の位置は「住民の利用に最も利便であるように、交通の事情・他の官公署との関係等についての適当な考慮を払わなければならない」としています。

 だからこそ、府庁舎は「人口重心」、交通利便な位置に立地するのが自然です。現庁舎も1926年に西区江之子島から現在の大手前に移り、以来、大阪城とともに大阪のシンボルとして歴史を重ねてきました。知事が例にあげる東京都庁も、より人口重心に近い新宿への移転です。

 府庁舎の咲洲地区への移転は、府庁を府民から遠ざけ、他の官公署から引き離すもので、府民の理解と納得は得られません。答弁を求めます。

 次に「財政シュミレーション」の問題です。

 WTC移転案が安いというのは間違いです。2つの視点から質問します。

 まず第1は、経費支出の比較です。スクリーンをご覧下さい。

 WTC移転案は977億円で、耐震補強案は767億円となり、その差は210億円も移転案の方が高くなります。WTC購入によって得られる賃料、共益費収入を差し引いても67億円の差があります。耐震補強案の方が安いのではありませんか。答弁を求めます。

 土地活用収入も、WTC移転案は、歴史性の高い貴重な大手前の土地を大量に売却して費用が安くつくかのように見せかけているだけではないですか。

 しかも、路線価1u47万円〜51万円の土地が97万円で売却できるはずがありません。

 第2は、わが党の代表質問で指摘した、「費用便益分析」による財政シュミレーションです。

 知事は、「社会的な便益や費用については、貨幣価値に置き換えることが難しい」と答弁しました。

 しかし、「大阪府建設事業評価実施要項」では、10億円以上の事業は建設事業評価委員会の意見を聴くのがルールではありませんか。

 平成21年3月の「府有財産有効活用検討会」で財産活用課長は、検討会委員から庁舎移転に関する提言が出されていることに言及し、「提言につきましては、担当課に資料提供させて頂いたところです」と述べています。この委員は、府庁舎の耐震案、移転案についての「費用便益分析」の計算をしています。

 その資料によると、期間を50年とした費用便益分析の結果は、WTC移転案が耐震案より1000億円も高くなっています。とても“移転案が安い”などと言えたものではありません。庁舎移転という重要問題を議会で議論する際、当然、資料として配布すべきです。なぜ配布しなかったのですか。

 こうした重大な基本的資料が議会に明らかにされていないことは重大問題です。すべての資料を議会と府民に開示し、公正・公平な議論が出来るようにすべきではありませんか。

 次に、庁舎は、災害時の防災・復興の拠点機能を備えていることが必要です。
 現庁舎は、高層ビルではありませんから、耐震補強すれば東南海・南海地震、上町断層地震、いずれの場合も十分な耐震性を確保できます。WTCビルより安全性にすぐれており、災害対策本部としての機能を発揮することができます。耐震性、職員の参集、警察本部や国機関との連携など、総合的にWTCより、はるかにすぐれた条件がそろっています。どうですか。

 現在、地震研究の進歩で、最も問題になっているのは、長周期地震動による超高層ビルなどの被害です。

 注目されたのが、2004年の新潟県中越地震の時、震源から約200キロメートル離れた東京・港区にある六本木ヒルズでエレベーターのワイヤーが切れたことです。

 大阪府も参加した「大都市大震災軽減化特別プロジェクト成果普及事業チーム33」が編集した、『巨大地震災害へのカウントダウン』の中で「高層建築物特有の課題として被災後の検査、照査や応急危険度判定が困難、被災した高層建築物の復旧や補修が容易でない、就業者、企業が関係者であり、建築物内における業務が継続困難になる」と書かれ、次のような表も掲載されています。

 30階以上は、ほとんどの項目が全く機能しない、R=レッドとなっています。避難、人命救助、エレベーターの点検・復旧、水の確保、復旧事業の継続もきわめて困難となっています。

 WTCビルもまさにその一つです。

 WTCの耐震補強は2003年12月、中央防災会議が想定した4つの地震波を入れて行うというものです。しかし、2004年、紀伊半島沖地震の長周期地震動による膨大な観測記録に基づく予測などを含め、国交省は、早ければ来年度にも高層ビルの設計基準を見直す方針です。また、すでに長周期地震動予測地図試作版も、この9月に国の地震調査委員会から出されています。

 知事は、これでも府民の安心・安全を守る拠点としてWTCビルの方が耐震補強案より、優れていると言い張りますか。なぜ、安全性においても優れている現庁舎の耐震補強よりも、危険度の高いWTCに移転しようとするのですか。

 次に、WTCビルのある咲洲地区の開発問題です。

 大阪市は98年までに「テクノポート大阪計画」に9300億円をつぎ込み、なかでも中核的プロジェクトのWTC、ATCに2600億円もつぎ込みましたが、失敗しました。大阪市は昨年9月、テクノポート計画の「終結宣言」を出し、今年2月には「咲洲プロジェクト報告書」で、「“新都心を目指す”ことが誤りだった。今後は見直す」と総括しました。

 9月15日の大阪市議会で瀬戸一正市会議員が、5年間で100億円の新投資計画というけれども、ペデストリアンデッキも前から言っていたわけで、これまでのまちづくりの範囲内じゃないか、と質問したのに対し、平松市長は「今後5年間をめどとした100億円程度の投資というのは、今までと大きくは変わっておりません」と答弁しています。

 左岸線延伸部、なにわ筋線については、「淀川左岸線の延伸、なにわ筋線、それからUSJのところからの延伸、桜島線の延伸でありますとか、巨額の事業費を要しますし、採算性の確保やその負担方法が大きな課題となってくるのは火を見るより明らか、大阪市としては非常に財政状況が厳しいなか、国家的な視点から事業可能性の検討など行っていきたい。20年、30年という時間軸を念頭に議論すべきもの。話題だけが一人歩きすることがないように注意しなければいけない」と答弁しています。

 また、角野幸博・関西学院大教授は、「『府庁移転で勝手に企業がついてくると思ったら大間違いだ』移転ありきではなく、周辺の産業や住民を巻き込んで、まちづくりの視点で時間をかけて進めるべきだ』と警鐘を鳴らす」と新聞でのべています。知事の開発構想は、りんくうタウン、テクノポート計画などの過ちの繰り返しです。庁舎移転を破たん処理の道具にすべきではありません。答弁を求めます。

 さらに知事は、夢洲・咲洲地区まちづくり推進協議会の初会合で「カジノがキーワード」「国際会議場や展示場で人を呼び込んだときに、遊べるパッケージにしないと機能しない」と発言したと報じられていますが、事実ですか。“賭博場を開設して人を呼び込む”とは重大問題です。

 平成14年9月定例府議会で日本共産党の奥野勝美議員の質問に、当時の府警本部の生活安全部長は「@刑法の賭博罪との関係から、その実施にあたっては新たな立法措置が必要。A刑法では賭博は禁じられている。B営業行為への外国人犯罪組織や暴力団の関与あるいはカジノ周辺における風紀問題や治安の問題、あるいは少年の健全育成に与える影響が考えられます。もし、具体的にカジノを実施すべきかどうかという問題が生じましたならば、以上の諸問題について、国民の幅広い議論を経て、その是非が検討されるべきであろう」と答弁していますが、改めて府警本部長の答弁を求めます。

 咲洲地区は、ポートタウンに多くの住民が暮らし、学校などの教育施設、商業施設もあり、多くの人々が働いています。海外から人を呼び寄せるため、賭博場の開設は、咲洲地区のまちづくりにとって「百害あって一利なし」と言わざるを得ません。

 安心・安全の社会の原点である法秩序への挑戦であり、なによりも咲洲地区の人々のまちづくりの願いに反することではありませんか。

 「関西財界の野望」と「知事の夢物語り」などで、府民・市民のまちづくりの願いを踏みにじることなどはやめるべきです。答弁を求めます。

 最後に、大手前地域のまちづくりについて質問します。

 まず、成人病センターの移転、建替え問題ですが、当初、現地建替えで計画されていたものが、知事の思いつきで突然、大手前案が浮上しました。森の宮は、成人病センターをはじめ、がん予防検診センター、健康科学センター、公衆衛生研究所など医療・研究機関が集積しており、利便性も抜群です。大手前移転が最良の選択かどうか、医療関係者、患者、府民の声をよく聞いて、慎重に検討することが必要だと考えますがどうですか。

 大手前地域のまちづくりは、歴史や文化のまちづくりの研究者、自治体関係者、さらに府民参加の幅広い人々で構成した「大手前まちづくり府民会議(仮称)」のもとで進めるよう提案します。

 現府庁舎は、貴重な歴史的価値の高い建築物です。日本建築学会近畿支部からも保存活用の要望書が府に寄せられています。耐震補強すれば、50年、60年使用できるのですから、大手前の中核施設として大切に保存・活用すべきだと考えます。答弁を求めます。